ヤンヤン 夏の想い出
台北に暮らす小学生のヤンヤンの家族の平和が崩れた。祖母は脳卒中、母は宗教に走り、父は昔の恋人と不倫している。そして姉は、親友の彼氏と恋仲に。家族はバラバラになってしまうのだろうか…。
台湾の巨匠エドワード・ヤン監督は、台北のとある家族を主人公に、それぞれの人生の断片を切り取りながら、その心情をきめこまやかにつづっていく。エピソードはリアルだけど重苦しさはなく、時は過ぎてゆき、みんな生きている。そんな人生が愛しくなる人間ドラマだ。
普通のお父さんが不倫していくプロセスをサラリと演じるウー・ニエンジエン、彼と知り合う日本人イッセー尾形のいぶし銀の魅力に注目。また映像の美しさも特筆ものだ。(斎藤 香)
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名セリフの宝庫 |
3時間の長さが少し気になりましたが、全体的に丁寧につくられてますし、どきっとするセリフが随所にあるので考えながら見ているとそれほど気になるほどではありません。
人生とはとかくやるせないものですが、この映画を見ていると肯定的に考えられてくるので不思議に救われます。とにかくよく考えられたセリフが素敵です。おもわず、うむむと唸ることが多かったです。
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シンプルな足し算としての人生 |
できちゃった結婚、昏倒・入院・意識不明、初恋の人との30年ぶりの再会・密会、新興宗教への傾倒、行き詰まった会社経営、学校の先生と教え子の母親との情交、詐欺被害、出産、自殺未遂、東京への海外出張、友人の恋人への恋心、初デート、刺殺事件、死など、日常的でもあり非日常的でもあるさまざまな出来事。台北の高級マンションに住む父、母、祖母、姉、弟の一家、そして彼らの親戚、近隣の身に、これらの出来事が次々と生じる。
エドワード・ヤンの映像は、徹底して対象と距離を置く。彼は、英題を『A One & A Two』と題したように、ハリウッド映画的な過剰な掛け算抜きに、ただの「1(=個人)+2(=個人対個人)」というシンプルな足し算でしか、現代都市での人間関係を示さない。だから、夢と現実、ヒューモアとイロニー(皮肉)とが交錯しながらも、それぞれの人生には、いい方向にも悪い方向にも決定的に展開するようなことは起こらない。でも、大仰な癒しを回避するヤンの映像表現は、ある意味、すべての生命に対して平等・対等な敬意を払うところから生じている、と言ってもよいだろう。
映画は、夢物語ではなく想像を交えたリアリズムだと考えておられる方々は、この映画に強く共感なさることでしょう。
ちなみに、岩井俊二が演出を担当した日本版予告編も収録されている。岩井ファンも必見。

